建築学コースのカリキュラム(専門展開科目)

 

1年次

・工学フォーラム(必修科目)

 建築学コースの1年生を対象に行う、大学教育・大学生活の導入教育。10人程度の少人数のグループに分かれ担当教員と共に活動する。内容としては建築研修旅行が中心となるが、学生と教員、学生相互のコニュニケーションをはかり、大学と建築分野への興味や親しみを増してもらうことが目的である。


・図学(必修科目)

 講義は建築学との関連を重視してすすめる。前半は図、形、空間の楽しさを身近な素材をもとにして味わい、基礎的な平面図学を学ぶ。後半は透視図(パース)の図法と様々な描き方の立体表現を学ぶ。

 講義内容は、図・形の意味と役割を知る(直線、円弧、曲線)、点と直線の投象、立体の投象(円錐、円柱、多面体、曲面)、断面、陰影、透視図(パース)の基礎、一消点透視図、二消点透視図、簡略図法、外観パースの作図、インテリアパースの作図、点景と着色等である。


・建築製図A,B(必修科目)

 建築界の基本言語である「図面」の読み方、書き方、表現手法などを建築作品の原図コピーや作図を通して修得することをめざす。

 建築製図Aでは、線とレタリングの練習、建築記号の練習、配置図コピー、平面図コピー(平面製図要領、基準線・下書き線、水平断面の製図、家具・設備、空間仕上げの製図)、立面図・断面図コピー(立面・断面製図要領、基準線・下書き線、垂直断面の製図)、インキング、着色の練習、矩計図コピー(詳細部分製図要領、基準線・下書き線、詳細断面の製図、仕様、雨仕舞いの製図)、木造住宅のコピー(木造建築の特徴、平面図、立面図、断面図、軸組図、矩計図)である。

 建築製図Bの課題は、①透視図法の表現(3週間)、②階段詳細図および部分設計(3週間)、③アイソメトリック図法の表現(3週間)、④冬休み宿題、⑤小設計(4週間)である。


・構造力学Ⅰ,ⅡA

 構造力学Ⅰでは、構造物が外力を受けたときに発生する応力や変形を求めるための、初歩的・基礎的な力学を体系的に学ぶ。

 講義内容は、力のつり合い、モーメントのつり合い、構造物の支え方と反力の種類、建築構造物の構成部材と構造形式、軸力、せん断力、曲げモーメント、静定はりと不静定はり、静定ラーメン、静定トラス、構造物の安定・不安定、断面の応力度と諸係数、曲げ材の応力度、圧縮材の応力度、組合せ応力等である。

 構造力学ⅡAでは、静定梁に発生する「たわみ」と「たわみ角」を求める手法(モールの定理,仮想仕事法)を学んだ上で、応力法により一次不静定構造物の問題を解く。


・建築概論

 これから学ぼうとする建築について、広がりと多様性を国内国外の建築を通じて理解し、さらに建築に求められる職能や今後の展望などを、さまざまな方向から取り扱う入門講義。

 講義内容は、ガイダンス(建築へのススメ)、現代日本の建築デザイン動向(意匠・設計、構造・設備・環境)、長崎の建築文化(長崎市内、長崎市外)、世界の近・現代建築(ヨーロッパ、アメリカ・アジア)、建築の職能(建築計画、、都市計画、町並みとまちづくり、木造技術、安全と安心、景観と文化)、実際に建物を見る(見学会)、建築の今後と展望等である。


・美学美術史(隔年開講,非常勤)

 建築学の基礎教養として広く芸術への概説をスライド、見学会等をまじえて行う。


・造形デザイン(隔年開講,非常勤)

 生活空間から発生するより身近なデザインを考え、実技実習を行う。 実習内容は、フロッタージュによるパターンデザイン、色紙による「喜、怒、哀、楽」の感情表現、数字をモチーフにした色紙によるデザイン、風景写真をモチーフに色彩構成、室内をモチーフにイメージを色彩表現等。


・住居学

 生活と住居との関わりを概略的に理解することを目標とする。日本と世界の住居を歴史、社会、自然環境の視点から幅広く学ぶ。

 講義内容は、人と住居、住居の役割と意味、心のなかの住居、住生活と住まい方、物としての住居、自然環境と住居、社会環境と住居、日本の住居の発展、世界の住居の発展、住居の新しい試み、住居と健康、心理、福祉、住居の再生等。




2年次

・建築設計製図ⅠA,ⅠB(必修科目)

 設計課題の製作を通して建築設計の能力を養い、建築デザインの面白さを学ぶ。最初は簡単な建築から入り、どのように建築的にまとめるか実践的する。またグループで模型製作をして建築表現を体験する。

与えられた課題に対して、所定の期限内に各自の設計案をまとめ、その図面を作成して提出する。各課題とも必ずエスキース・チェックを受けること。原則として製図室での作業を義務づける。

 課題は、学生喫茶、記念館、建築模型、図書館、住宅、即日設計等である。


・構造力学ⅡB

 構造力学IIAに引き続き、力のつり合いだけでは解けない不静定ラーメンの応力と、変形の解析法について学ぶ。 講義内容は、たわみ角法、固定モーメント法、直接剛性法、D値法等である。


・建築計画A

 建築計画に関する基礎知識とそれ に基づくデザイン方法を説明する。前半は、計画学の全体的な役割、意味を理解し、後半は各諸施設の建築計画の特徴を解説する。いずれも実際の建築作品を参 照にしながら、授業の理解を深めることになる。また、同時に行われている設計製図の課題に即応した授業計画となっている。


・建築一般構造

 建築物に関する各種の基礎的な構造・構法と、物的な構成部材および形態的な特徴を説明する。特に、前半は主体構造、後半は各部分について概説する。実際の建築作品等と併せて解説することにより、より理解を深めるようにしている。


・建築材料

 木材、鋼材、コンクリートなどの建築構造材料、ガラス、床仕上げ材などの非構造部材や建築仕上げ材料が持つべき力学的性質、耐久性、耐用性、耐火性、安全性などについて紹介する。


・建築材料実験

 木、鉄鋼、コンクリートは建築物を構成する基本素材である。これら建築材料の力学的・物理的特性の把握実験を行い、各材料の特性について理解を深める。現場管理のみならず意匠設計や構造設計の分野でも必要となる基礎知識を体得すると共に、実験データのまとめ方について訓練を行う。担当教員は実験の解説と機器操作を行うが、実験を行うのは学生である。学生は実験結果と考察をレポートにまとめ、実験後に提出する。


・構造計画(非常勤)

 建築の計画、設計に役立つ基本的な構造の知識を、数式を用いずに説明する。竹ひご等を用いて各種フレーム形状を作成し、その毎々の力学的特性を体験する。


・環境工学ⅠA,ⅠB

 環境工学は心理的、物理的性能に基づく環境論や意味論的環境論として、空間計画や設計にアプローチする学問である。ⅠAでは建物と日照、日射、気温の関係を学ぶ。ⅠBでは光の単位、投射、環境照明デザインおよび、室内音響など音の基礎について学ぶ。


・耐震設計法

 耐震設計法では、建築構造物の荷重と耐震設計の基本的な考え方、およびその具体的な設計の方法・手順等を講議する。

 講義内容は、地震動とその被害、固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風圧力、耐震基準の変遷、1自由度系の動的力学、地震動と建物の揺れ、地震層せん断力、剛性率、偏心率、保有水平耐力、極限解析法と節点振り分け法、仮想仕事法、耐震診断と耐震改修等である。 


・住居計画

 具体的に「住居をつくる」ということについて、現地、計画、設計、施工、管理など、住宅の空間、構法、設備などの基礎知識を理解しながら、住居の完成までひととおり学習する。

 講義内容は、住まいの役割と機能(住居の役割、家族と住居、住居と地域)、生活行動と生活空間 (生活行動の基本要素、生活空間および単位空間の諸条件、住宅平面の計画、集まって住む計画)、快適な室内環境(室内環境の調節、光の調節(採光・照明など)、温湿度の調節、音の調節)、住居の管理と安全(住居の維持・管理、住居の衛生管理、災害と事故)、高齢者・障害者と住生活(自立した生活の条件づくり、住環境の整備、住まいと地域生活)、インテリア・リフォーム、エクステリア・資金計画、住宅設計(演習)等。 


・住居インテリア(非常勤)

 インテリアという面から見た居住の計画について、空間の捉え方、色彩及び材料等が総合的に、生活の場としての住宅にどれだけ深くかかわっているかを、演習を通して学ぶ。 


・建築CAD

 本講義では、CADを用いた2次元図面の作図法を習得するとともに、3次元のCGなどについても演習形式により学ぶ。

 講義内容は、簡単な2次元CADの演習、本格的な2次元CADの演習、課題作成・提出 (自分の部屋の作図、簡単な3次元CADの演習、第2課題提示 (建築学科の作業室)、課題作成、第2課題提出等である。 


・景観計画

 美しい景観創造のために、必要な計画理論や制度について学習し、そうした基礎知識を踏まえて各地の景観デザインの事例を学んだり考察を加え、さらに実際の景観地のスタディを通して景観のあるべき姿を考える。




3年次 

・建築設計製図ⅡA,ⅡB(必修科目)

 2年次の建築設計製図ⅠA、ⅠBに続いて、比較的規模が大きく機能が複雑な施設の設計を行う。 課題は、コミュニティセンター、集合住宅、博物館・グループワークショップ、建築大学、即日設計である。 


・建築設計製図SA,SB(非常勤)

 建築設計にとくに関心と意欲を持つ学生のための設計製図スペシャルコース。建築デザイン界での最新の動向を踏まえながら、毎回ダブルキャストのゼミ形式で進める。既受講の上級生のアシスタントも加わり、開講期間中に二つの課題を関連づけながら進行する。 


・西洋建築史

 広く建築技術者の素養として求められる西洋建築の歴史について概説する。すなわちヨーロッパの古代~近世における各時代の建築様式の変遷、主要な作品、建築家、建築思潮などについて学習する。スライドを多用する。


・日本建築史

 広く建築技術者の素養として求められる日本建築の歴史および歴史的な遺構について概説する。すなわち古代~近世の日本建築の歴史を概観するとともに、主要作品の特質、歴史的な建築遺構の見どころなどを講述する。


・建築計画B

 建築計画学に関する基礎知識を説明する。各諸施設、歴史的環境などの事例を通して、計画学が果たしている役割、建築設計・デザインに向けて理論を講義する。また、現代社会が建築に求めている諸課題に対して計画学がどのような貢献をしているのかを解説し、さらに受講生による建築作品の計画的な検討とその発表を行い、より計画学の理解を深める。


・都市計画

 都市と都市計画を知る、人間の生活と居住の場としての都市を理解する。都市の仕組みと構成の理論を学ぶ、都市の設計方法を学ぶ、都市計画の制度手段を学ぶ、世界の都市計画を知るという6つの方向からのアプローチで学習を深め、これからのまちづくりを考える。


・建築意匠

 建築空間の構想や造形にあたって、生活・建築・都市・環境の形成プロセスに触れ、イメージづくりや形の提案が行えるようにする。

人体や自然の条件をもとに建築意匠の成り立ちを学び、伝統建築や現代建築における意匠や設計例を通してデザインセンスを養う。


・地域計画

 地域空間を理解、計画するための基礎的な知識を概説する。地域の表現、物的構成要素の役割とそれらによる組み立て、歴史的・文化的・社会的背景、および計画の諸理論を、実例を分析しつつ説明する。また、具体のワークショップも行い地域の計画案を提案する。


・環境工学Ⅱ

 環境工学は心理的、物理的性能に基づく環境論や意味論的環境論として空間計画や設計にアプローチする学問である。環境工学Ⅱでは音環境(とくに建築音響を中心に)の基礎とその応用について学ぶ。


・建築設備原論

 建築設備の基礎とその応用例を、国内外の事例から学ぶ。

 講義内容は、設備設計施工事例、環境と空気・水・エネルギー、建築設備の概要、室内環境計画、空調設備計画、電気設備計画と情報・通信設備、ガス設備と防災設備、環境共生デザインと国内外事例、サステナブル・ハビタット、スマート・エネルギー・ネットワーク、省エネルギー計画と創エネルギー計画、エネルギー政策と建築設備設計等である。


・建築設備計画

 講義の前半において建築設備の基礎及び給排水設備について学ぶ。後半では集中講義により、第一線で活躍されている各先生の作品及び設計過程の要点をパワーポイント、スライド等でレクチャーする。

 講義内容は、建築設備の概論、建築設備と環境問題、建築設備の基礎知識、給排水衛生設備、光環境の基礎から照明デザイン、光による町づくりまで、建築設備計画の最新手法等である。


・鉄筋コンクリート構造(非常勤)

 鉄筋コンクリートをはじめとする鉄とコンクリートから成る合成構造についての学習を行う。本講義は建築技術者に必要な基礎知識の習得を目的としており、構造設計の基礎となる理論や考え方を理解し、簡単な許容応力度設計が行えること、建築関係法令、日本建築学会の構造計算規準等によって定められている規則を把握することを目的としている。


・鉄筋コンクリート構造演習(非常勤)

 鉄筋コンクリート構造で学習した知識を基に、より実践的な構造計算の解説・演習を行う。低層建築物を対象とした構造計算書及び架構配筋詳細図の作成を通じて、構造計算の基礎技術を習得する。本講義は 建築の構造技術者に必要な基礎技術の習得を目的としており、低層建築物の許容応力度設計が行える程度の技術習得を目標とする。


・鋼構造

 本講義では、鋼構造建物に関する基礎知識と設計方法を説明する。鋼構造設計規準の許容応力度設計法が、建物のどのような挙動や破壊性状に基づいて定められたか、材料の性質とどのような関係があるかを示すことにより、鋼構造建物の設計方法とその意味を詳述する。


・鋼構造演習

 鋼構造演習では,設計実務に対応した知識の習得を目的とする.小規模な鋼構造建築物の構造計算を行い,許容応力度設計法に従って設計を進めることにより,理解を深める.


・建築法規(必修科目,非常勤)

 建築基準法をはじめとする建築関係法令の趣旨と内容を、図解や演習でできる限り分かりやすく学ぶ。

 講義内容は、建築基準法の概要、用語の定義、面積・高さの算定方法、制度規定(1)法の適用および適用の除外、制度規定(2)確認・検査の手続き、集団規定(1)道路の定義、建築物または敷地の道路の関係、集団規定(2)用途地域、建ぺい率、容積率、集団規定(3)高さ制限(道路斜線、隣地斜線、北側斜線、日影規制)、集団規定(4)用途制限、単体規定(1)一般構造、単体規定(2)構造規定、単体規定(3)防火・避難規定、その他の規定(総合的設計、建築協定、建築士法と都市計画法等である。


・建築施工(必修科目,非常勤)

 建築の施工範囲、実際の作業業種、工事の種類など現在行われている建築施工を理解すると共に、今後の工事の合理化、省エネルギー化などによるこれからの建築工事の変わりつつある現状を学ぶ。現場見学が可能であれば、現場見学をおこなう。


・建築測量

 建設工事を進めるための測設等に必要な測量の基礎的技術を学習する。

 講義内容は、平板による敷地測量、水準測量、水準測量計算、角測量、トラバース測量、トラバース計算、測量結果の検討、トラバース測量結果に基づく細部測量、測量結果に基づく敷地図作成等である。


・生活文化論

 住居をとりまく生活文化を、多面的に広く学習する。前半は、日本住宅を象徴する「床の間」を取上げ、生活の変化にともなう住宅形式の変化について学ぶ。後半は、歴史的な住宅の見学を通じて、日本の寸法や建築材料について学ぶ。以上をとおして、住居の計画や設計へ結びつける基礎を培う。


・現代建築事情(隔年開講,非常勤)

 建築界の第一線で活躍している本学OB、OGのピックアップメンバー3人による特別講義。設計、施工、行政、計画コンサルティングなど建築各界並びに関連業界での最新の話題を提供する。一面で就職ガイダンスを兼ねる。


・建築学海外研修

 建築学科が実施する海外研修旅行に参加し、定められたレポート課題の提出・報告会などを行う。 受講者には、以下の作業を義務付けている。

・約10日間程度の海外研修旅行を立案・企画する。

・海外研修旅行に参加する。

・事前および事後レポートを作成・提出する。

・下級生を対象とした報告会を実施する。




4年次 

・研究ゼミナール(必修科目)

 学生各自の具体的卒業研究テーマを確定していくための卒業研究プレゼミナールの役割を担っており、少人数ゼミの授業形態の中で、各自の卒業研究テーマの確定を目指して、資料の収集や調査、分析、予備実験などを実践していく。


・卒業研究(必修科目)

 論文か設計かを選択して取り組む。今までに学んだ知識を基礎として、さらに自分に関心がある専門分野の最先端の知識を習得するとともに、新たな知見を加えようとするものであり、4年間の大学生活の集大成である。